太陽光発電を検討している方の中には、「太陽光発電の2024年度の売電価格ってどのくらい?」という疑問を持っている方も多いのではないでしょうか?
そこで本記事では、2024年度の太陽光発電の売電価格を解説します。
また、FIT制度や新設される屋根設置型の太陽光発電の売電価格、太陽光発電の今後にも触れるため、太陽光発電の売電価格への理解が深まるでしょう。
太陽光発電の売電価格が知りたい方や太陽光発電の今後が知りたい方は、本記事をぜひ参考にしてください。
そもそも売電制度とは?
太陽光発電の売電制度は、太陽光発電で生産できた電気を電力会社に売却できる制度です。
太陽光発電で生産した電気は自ら利用するだけではなく、電力会社に売却できます。
売電制度を理解する上で、FIT(固定価格買取制度)への理解は欠かせません。FITとは何か、FITの価格の推移、FIT制度の廃止について、それぞれの詳細を確認しましょう。
FIT(固定価格買取制度)
FIT(固定価格買取制度)は、2012年に国が定めた再生可能エネルギーを固定価格で買い取る制度のことです。
FITは、再生可能エネルギーの普及を目的に導入されました。FITがあることで、太陽光発電で生産した電気を各電力会社が一定価格で買い取ってくれます。
そのため、企業にとっては再生可能エネルギー発電事業に着手しやすい環境になったこと、一般住宅では太陽光発電を取り入れやすくなったことなど、さまざまなメリットが生まれました。
また、FITの固定価格での買取期間は10kW以上の太陽光発電で20年間、10kW未満のものは10年間です。
FIT価格の推移
2013年度から2023年度のFITの売電価格は、次の表のとおりです。
年度 | 10kW未満(円/kWh) | 10kW以上50kW未満(円/kWh) |
---|---|---|
2013年度 | 38 | 36 |
2014年度 | 37 | 32 |
2015年度 | 33 | 29 |
2016年度 | 31 | 24 |
2017年度 | 28 | 21 |
2018年度 | 26 | 18 |
2019年度 | 24 | 14 |
2020年度 | 21 | 13 |
2021年度 | 19 | 12 |
2022年度 | 17 | 11 |
2023年度 | 16 | 10 |
FITの買取価格は、年々下がっています。
しかし、FITの買取価格は太陽光発電システムの価格を基準として決められており、設置コストの回収に加えて、設置する側が適正な利益を得られるように調整されています。
そのため、昔の買取価格は高いから得、今は買取価格が安いから損といったことはありません。FITの買取価格は、投資した費用を回収でき、公平な利益になるように設計されています。
FIT制度は廃止される?
FIT制度は、廃止されません。
初めてFIT制度で売電を始めた太陽光発電の買取期間が2019年で10年を迎え、固定価格での買い取りは終了しました(卒FIT)。
当時は卒FIT後の見通しが未確定だったため「2019年問題」として話題になりましたが、FIT制度自体は引き続き継続され、新たな再生可能エネルギーへの支援策として機能しています。
また、FIT制度の契約が終了すると固定価格での買い取りは終わってしまいますが、太陽光発電で生産された電力の売却は引き続き可能です。FIT制度の契約が終了したら、電力会社と新規で売電契約を結びましょう。
もともと契約していた電力会社から、売電単価の高い電力会社への売電先の変更も可能です。
2024年度の売電価格は?
2024年度の売電価格は、次の表のとおりです。
1kWあたりの売電価格 | |
---|---|
出力10kW未満 | 16円 |
出力10kW以上50kW未満 | 10円 |
出力50kW以上 | 9.2円 |
出力250kW以上 | FIP制度の適用 |
「買取価格・期間等(2023年度以降)」(経済産業省資源エネルギー庁)をもとに作成
FIT制度の売電価格は、1kWあたりで表示されています。それぞれの詳細を確認しましょう。
出力10kW未満は1kWあたり
出力10kW未満の住宅用太陽光発電でFITの認定を受けるのであれば、2024年度の売電価格は1kWあたり16円です。
2023年度の価格から変更がなく据え置きとされたため、前年度と同じ価格で売電を始められます。買取期間も変更はなく、認定された年から10年間です。
過去の方式と変わらず、買取方法は余剰買取方式を採用しています。
また、FIT制度による10年の買取期間が終わった後の売電価格は、10円/kWhと予想されており、2022年よりは1円値上がりしています。
出力10kW以上50kW未満は1kWhあたり
出力10kW以上50kW未満の太陽光発電でFITの認定を受けるのであれば、2024年度の売電価格は1kWあたり10円です。
出力10kW未満と同様、2023年度と同様の価格で売電をスタートできます。
今回はシステムにかかる費用に大きく変わりはありませんでしたが、土地の造成費用が0.4万円/kWから1.2万円/kWに上昇したため、売電価格の調整が行われませんでした。
また、買取期間には変更がないためFIT制度の認定を受けた年から20年間は固定価格で売電可能です。
しかし、地域活用要件は継続されているため、発電した電気のうち30%以上は自家消費しなければいけません。
出力50kW以上は1kWhあたり9.2円
出力50kW以上250kW未満の太陽光発電でFITの認定を受けるのであれば、2024年度の売電価格は1kWあたり9.2円です。
2023年度の売電価格は9.5円だったため、売電価格が0.3円下がった形となりました。
価格が下がった理由は、土地造成費用の負担は8,000円ほど増加しましたが、システムにかかる費用が4,000円ほど安くなると想定されたためです。
売電価格は下がりましたが、買取期間に変更はなくFITの認定を受けた年から20年間、全量売電が可能です。
出力250kW以上はFIP制度が適用される
出力250kW以上の太陽光発電は、FIP制度のみ認定を受けられるルールへ変更されます。そのため、出力250kW以上の太陽光発電を導入する場合は、他のものとややルールが異なります。
FIP制度は市場価格にあわせて売電価格が変わり、買取期間はFIPに認定された年から20年です。
出力250kW以上500kW未満の太陽光発電は、2023年度までは入札制のFIT制度とFIP制度のどちらかを選べる状態でしたが、2024年度からはFIP制度しか選べません。
ルールが変わることを頭の片隅に入れておきましょう。
出力250kW以上の太陽光発電の導入を考えている方は、あらかじめ仕組みや注意点を把握しておくとよいでしょう。
【2024年新設】屋根設置に関する固定買取価格
2024年度から、屋根設置に関する固定買取価格という新しい区分がFIT制度に追加される予定です。例えば、ビルや工場、倉庫など建物の屋根に設置される太陽光発電が対象となります。
予定されている買取価格は、次の表のとおりです。
1kWあたりの売電価格 | |
---|---|
出力10kW以上50kW未満 | 12円 |
50kW以上 | 12円 |
「買取価格・期間等(2023年度以降)」(経済産業省資源エネルギー庁)をもとに作成
いずれの太陽光発電も1kWあたりの売電価格は12円で、地上に設置するタイプの太陽光発電よりも売電価格が高く設定されています。
また、買取期間は地上に設置するタイプと同様に20年間であり、長期間安定した価格で生産した電気を売却できます。
売電収入を伸ばしていきたい方は、地上に設置するタイプだけではなく屋根に設置するタイプの太陽光発電も選択肢に入れるとよいでしょう。
屋根設置の売電価格が高い2つの理由
地上に設置するタイプよりも屋根に設置するタイプの太陽光発電の方が売電価格が高いことには、大きく2つの理由があります。
それぞれの詳細を確認します。
屋根設置の導入を促すため
屋根に設置するタイプの太陽光発電の売電価格が高いのは、屋根への設置の導入を促すためです。
国の目標に、2050年のカーボンニュートラルの達成があり、そのためには太陽光発電の設置を増やしていく必要があります。
しかし、地上に設置するタイプの太陽光発電には地域の反対や自治体の規制条例などさまざまな制約が存在し、簡単には設置できません。
そこで、屋根に設置するタイプの売電価格を上げて、地上だけではなく屋根にも導入してもらうことで太陽光発電の数を増やそうとしています。
ペロブスカイト型太陽電池の製品化が迫っているため
ペロブスカイト型の太陽光電池の製品化が迫っていることも、屋根に設置するタイプの太陽光発電の売電価格の高さに影響を与えています。
ペロブスカイト型の太陽光電池とは、ペロブスカイトといわれる結晶構造の材料を用いた新しいタイプの太陽電池です。高い変換効率を誇り、既存の太陽電池よりも容易に生産できることで注目を集めています。
薄型かつ軽量であるため、従来の太陽光パネルでは導入不可能だった建物も、ペロブスカイト型の太陽光パネルなら設置できる可能性があります。
2025年前後での実用化が想定されており、あわせて売電価格を上昇させることで太陽光発電の設置を促進させるのが目的です。
卒FIT後について|売電価格はどうなる?
FIT制度の買取期間中は固定価格で売電できるため、安定した運用が期待できます。しかし、FIT制度の買取期間が終了するとどうなるのでしょうか。
卒FITとは何か、FITの契約期間満了後の売電価格はどうなるのか、などを解説します。
卒FITとはなんですか?
卒FITとは、FIT制度の契約期間、固定買取期間が満了することです。卒FITのタイミングは、新たな節目となります。
例えば、FIT制度がスタートしたときにFIT制度により売電を始めた方は、2019年に買取期間の満了を迎えました。
契約満了を迎えた方は、そもそも太陽光発電を継続するのか、どの電力会社に売電するのかなど、新たな選択をしなければいけませんでした。
卒FITという言葉はただFITの契約が満了することを意味していますが、実際には数多くの選択肢があり、その後の状況を大きく左右する局面であるため、重要なターニングポイントといえます。
卒FIT後の売電価格は6円から10円程度
2019年11月からFIT制度が順次満了を迎えており、卒FIT後の売電価格は約6円から10円となっている電力会社が多いようです。
FIT制度の契約期間中よりも売電価格は下がりますが、売電ができなくなるわけではありません。
また、新電力(PPS)は卒FIT後の方に対して魅力的なプランを提示しており、大手電力会社よりも高く買取しているところもあります。ただし、新電力と契約するときは最低契約期間を確認する必要があります。
1年や2年などと最低契約期間が設定されていることがあり、短期間で契約の変更ができない会社もあります。
卒FIT後に新電力への売電を検討している方は、あらかじめ情報収集しておきましょう。
電気料金プランの変更や他サービスの併用
卒FIT後に売電先を変更するときは、売電に加えて購入電力の契約先も変更されるケースが多い傾向にあります。そのため、購入電力の価格がどの程度なのかは重要です。
例えば、売電価格が高く設定されていても、購入電力の価格も高くなってしまってはメリットが大きいといえないでしょう。
また、購入電力の価格を抑えること以外に、他のサービスを併用することで経済的メリット享受する方法もあります。具体的には、ガス代やスマートフォンの契約とセットにすることでトータルの料金を安くする方法です。
卒FIT後に売電先を変更するときは、売電価格以外の部分にも注目し、経済的なメリットが大きいサービスを利用しましょう。
何も考えずになんとなく選ぶと、高い電気代を払い続けることになったり、割引が受けられなかったりと損をする可能性もあるため注意が必要です。
売電価格が下がったら費用対効果は悪くなる?
売電価格が下がったら費用対効果が悪くなると考えている方もいるようですが、売電価格が下がっても費用対効果が悪くなるわけではありません。
FIT制度がはじまってから年々売電価格は下がっていますが、実は大量生産や施工技術の向上により太陽光発電の導入費用も下がっています。
太陽光発電システムはどのタイミングで購入しても8年から10年ほどで導入費用を回収できるように設定されています。
そのため、売電価格が下がったとしても損をしているわけではないため、必要以上に心配する必要はありません。
売電できなくなる可能性も?
FITで保証している買取期間は、10年あるいは20年です。そのため、卒FIT後は電力会社に電気を買い取る義務がなくなり、突然買取の契約を解除される可能性はあります。
しかし、日本は2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、まだまだ再生可能エネルギーを増やす段階です。したがって、電気の買取をしてもらえなくなる可能性は低いでしょう。
むしろ、脱炭素化の達成に向けて、卒FIT後も新電力や大手電力会社に電気を買い取ってもらえる可能性が高いと予想できます。
ただし、卒FIT後に新たに売電契約する会社は自分で探さなければいけないため、十分にリサーチしましょう。
卒FIT後に自宅の太陽光発電システムをうまく活用するためには
卒FIT後に自宅の太陽光発電システムをうまく活用したい場合は、自家消費するか電力会社に売電しましょう。
自家消費とは、自宅で電気を生産してそのまま自宅で電気を消費することです。
例えば、太陽光発電システムで発電した電気を蓄電池に貯めておけば電気代を節約できる上、災害時に停電しても蓄電池に貯めておいた電気で生活できます。
エコなだけではなく、経済面や安全面でもメリットがあります。また、電力会社に売電するのも有効です。
卒FIT後は売電価格が減少する傾向にありますが、比較的高い価格で買い取ってくれる電力会社も増えています。
複数の電力会社を比較して高く買い取ってくれる会社を選べば、定期的な収入を得られ、経済面で大きなプラスになります。
自分の置かれている環境にあわせて、選択するとよいでしょう。
売電価格の割増にあわせてやるべきこと3選
売電価格の割増にあわせてやるべきことは、次のとおりです。
それぞれの詳細を確認します。
屋根設置型太陽光発電の導入を検討
売電価格の割増にあわせて、屋根に設置するタイプの太陽光発電の導入を検討しましょう。
とくに工場や倉庫、ビルなどを持っている会社は売電価格の高い、屋根に設置するタイプの太陽光発電がおすすめです。
屋根に設置するタイプの太陽光発電の2024年度の売電価格は12円/kWhで、地上に設置するタイプよりも1kWあたり2円高いのが特徴です。
例えば、出力100kWの太陽光発電であれば2円違うと年間で約23万円の収入差が出ることがあります。
さらに、屋根に設置するタイプはすでにある建物に設置できるため、新たな土地を取得する必要がなく設置費用を抑えられるのも魅力です。より売電価格を増やしたい場合は、屋根に設置するタイプの太陽光発電を検討しましょう。
また、太陽光発電を導入する際は、手間をかけずに無料で利用できる一括見積もりサイトの利用がおすすめです。
ソーラーパートナーズやグリエネ、タイナビ蓄電池なら、安心して業者を選べます。
設置後の定期的なメンテナンス
屋根に設置するタイプなのか否かは関係なく、太陽光発電は設置したら定期的なメンテナンスをしなければいけません。
万が一メンテナンスを怠ると、太陽光パネルや配線類、パワーコンディショナーなどの設備の異常や劣化に気付かず、故障や発電量低下などのトラブルが発生するリスクがあります。
太陽光発電のメンテナンス義務は改正FIT法にも含まれているため、売電価格の割増ばかりに注目せず、保守管理にも意識を向けましょう。
運用方法の見直し
売電価格の割増にあわせて運用方法も見直せば、運用中の問題点や改善点を早期に発見でき、事前に対策を講じられるため大きなトラブルも発生しにくいでしょう。
売電価格が割増になるのに運用方法の問題からトラブルが発生してしまっては、時間もお金も失うなど、本来受け取れるメリットを受け取れなくなるかもしれません。
日頃O&M業者からの報告を受けている方は、発電量や発電効率などをレポートにて確認しましょう。
O&M業者とは、設置された太陽光発電の設備に関する運用と保守をする業者のことです。万が一問題点が見つかったらO&M業者と相談して、原因を探したり、太陽光パネルの交換をしたりと速やかに対応するとよいでしょう。
太陽光発電は今後どうなっていく?
太陽光発電の今後の展望と補助金について解説します。
現在のことしか把握していなかったり、現状だけに注目していたりすると、将来「思っていたのとは違った」と後悔する可能性があります。
後悔しないようにするためにも、太陽光発電の今後と補助金について事前に把握しておきましょう。
太陽光発電の今後の展望
太陽光発電は、電力会社への売電よりも自家消費が主流になるのではないかと予想されます。なぜなら、国の今後の方針が、電力会社への売電目的ではなく自家消費がメインだからです。
例えば、自家消費で余った電気は家庭用の蓄電池に貯めておき、V2Hを利用して電気自動車に充電することが推奨されます。
また、世界的に見ても環境問題は重要とされており、今後も太陽光発電を含めた再生可能エネルギーへの注目は高まる一方です。
そのため、売電から自家消費へと太陽光発電の目的が変化しても、太陽光発電の普及が促進される流れは変わらないでしょう。
太陽光発電関連の補助金・助成金は?
太陽光発電に関連した国からの補助金は未定です。
補助金の支給が未定であるのは、太陽光発電の導入費用が安くなったことが関係しています。従来は導入費用が高く、補助金を利用しなければ太陽光発電の導入がスムーズに進まないことが予想されました。
しかし、近年は大量生産や生産技術の向上によって費用が安くなっており、補助金でまかなう必要もなくなりつつあります。
ただし、一部の市町村では、自治体ごとに補助を設けているところもあるため、太陽光発電を検討している場合は事前に確認しておくとよいでしょう。
まとめ
2024年度の太陽光発電の売電価格は、次の表のとおりです。
1kWあたりの売電価格 | |
---|---|
出力10kW未満 | 16円 |
出力10kW以上50kW未満 | 10円 |
出力50kW以上 | 9.2円 |
出力250kW以上 | FIP制度の適用 |
「買取価格・期間等(2023年度以降)」(経済産業省資源エネルギー庁)をもとに作成
売電価格は年々下がっていますが、比例して太陽光発電の導入費用も安くなっているため費用対効果は悪くなっていません。
売電価格の割増が予定されていることや国の方針、世界的な流れもあり、太陽光発電は今後も普及されていくでしょう。
太陽光発電の導入を検討している方で時間や労力をかけたくない方は、太陽光発電一括見積もりサイトの利用がおすすめです。
例えば、ソーラーパートナーズやグリエネ、タイナビ蓄電池を利用すれば適正価格が分かる上、質の高い業者に出会える可能性があります。
太陽光発電を検討している方は、本記事の内容を参考に、まずは一括見積もりサイトで見積もりを依頼してみましょう。