蓄電池は、太陽光発電によって発電した電力を蓄えておける設備です。発電した電力を家庭内で使うことを想定して使う設備で、家庭用の蓄電池はさまざまな種類があり、メーカーによっても特徴が異なります。
蓄電池があることで、太陽光発電の使い方や停電時の過ごし方も変わるため、自身の生活スタイルに合う蓄電池を選びましょう。
蓄電池容量の単位や計算式
蓄電池を選ぶ際は、蓄電池容量から製品を選ぶケースが多いため、容量の単位の意味を理解し、自身に合う蓄電池を選べるようになりましょう。
蓄電池の容量を表す単位
蓄電池の容量は「kWh」で表され「キロワットアワー」と読みます。電力の単位「kW」と、時間の単位「h」を掛け合わせたものが「kWh」です。蓄電池は一度使い始めると、長期的に稼働するものなので、時間ごとの電力を表す必要があります。
一般的な4人家族の家庭で1日に使われる電気容量の目安は、昼間7kWh程度、夜間3kWh程度で合わせて約10kWhです。使用電気容量から停電時などを考慮し、家庭でよく使われる蓄電池容量は、5kWh〜7kWhが多い傾向があります。
必要な電力量を算出する計算式
必要な電力量の計算式は下記で計算できます。
必要な電力量(kWh)= 家電の電力(W)× 時間(h)
家電ごとに定められている電力に、時間をかけることで必要な電力を計算できますが、それぞれの単位に注意が必要です。家電の電力は一般的にWの単位で表されることが多いですが、電力量の単位はkWです。1kW=1,000Wなので計算後に単位の変換を行いましょう。
また、家電の中でも冷蔵庫やエアコンなど長時間使用するものと、ドライヤーや電子レンジなど短い時間しか使用しないものでは時間の認識が異なります。hの単位は1時間単位で使用していることが前提のため、注意が必要です。
主な家電製品の消費電力
普段から使っている家電製品の消費電力について確認してみましょう。停電が起きた際に、復旧する時間を考えて消費電力を計算すると必要な電力量が分かります。
電力量の計算の際は、時間単位で使うもの、分単位で使うものについても確認が必要です。家電製品によっては、ワット数(W)ではなく、アンペア数(A)やキロワット数(kW)の単位で表記されているものもあるため、下記の通りに置き換えましょう。
100W=1A 1,000W=1kW=10A
次に、主な家電製品の電力数を紹介します。同じ家電でも機能やサイズによって電力が異なります。停電時でも使いたい家電を優先的に確認することが大切です。
家電 | 消費電力 |
---|---|
冷蔵庫 | 200~500W |
電子レンジ | 500~1,000W |
電気ケトル | 1,200~1,300W |
エアコン | 500W~2,000W |
ドライヤー | 600~1,200W |
掃除機 | 800W~1,100W |
スマートフォンの充電 | 3W~5W |
蓄電池の容量選びで失敗しないためには?
蓄電池は、製品によって仕様がさまざまです。注意点を理解し、自身の住宅に最適な蓄電池を選びましょう。
定格容量ではなく実効容量に注目する
蓄電池の容量には、「定格容量」と「実効容量」の2種類の基準があります。定格容量は定格出力ともいわれ、規定の条件下で蓄えることのできる電気量を表しています。実効容量は、実際に使用が可能な電気量のことです。
定格容量と実効容量は、蓄電池の仕様情報に記載があります。一般的に実効容量は、定格容量以内の数値で定められています。蓄えられる電気量は多い方が良いため、定格容量と実効容量の差が少ない蓄電池を選ぶことがポイントです。
複数業者から相見積もりを取る
蓄電池はさまざまな種類があり、それぞれ仕様が異なります。設置場所の立地環境や太陽光との相性もあり、一概にどのメーカーが良いとは断言できません。
また、蓄電池はメーカーではなく、小売業者が価格を決めるオープン価格で販売されるものもあります。相場より高額な見積もりを提示する業者がいる可能性もあるため、比較検討することが大切です。相見積もりにより、正確な費用相場を把握しましょう。
補助金を利用する
蓄電池はその性能から、持続可能な社会に貢献できる設備として認識されています。多くの世帯への普及を国全体で後押ししているため、国や自治体の補助金を活用して安く導入できる場合があります。
補助金の金額や条件、公募期間は制度により異なるため、自身が使える補助金がないか確認することが大切です。確認方法は、公的機関のサイトで確認するか、販売メーカーに問い合わせる方法があります。
容量と価格のバランスを考える
蓄電池は、自宅の電力需要に合う容量を選ぶことが重要です。1日の電力消費量の数倍もの容量の蓄電池を選んでも、効率よく活用することができません。
容量が大きくなるほど、蓄電池の価格も高くなるため、過剰な容量は初期費用を回収する時間が長くなるデメリットがあります。自宅の電力需要や停電時に必要な電力量を考慮して最適な容量を選びましょう。
おすすめの蓄電池メーカー11社
ここでは、おすすめの蓄電池メーカーについて解説します。各社の特徴を確認しましょう。
パナソニック
出典:パナソニック
パナソニックの蓄電池の特徴は、太陽光発電と蓄電池の連携がスムーズな「創蓄連携システム」です。独自開発の太陽光発電と蓄電池は、電気の変換効率が高く、ロスが少ないことで有名です。
過充電を防げる自動充電システムや安全性の高さなど、パナソニックならではの魅力があります。蓄電池の種類が多く、使用用途によって適した製品を選べることも注目のポイントです。
シャープ
出典:シャープ
シャープのハイブリッド蓄電池は、国内有数の販売実績を誇っています。最新のAI技術が詰まったCOCORO ENERGYは、天気予報との連携により、発電量を予測して余剰電力を蓄電池へ自動充電することが可能です。
また、シャープの蓄電池は10年の長期保証があり、トラブルへの不安も少なく安心して利用できます。
オムロン
出典:オムロン
オムロンは太陽光業界では裏方として有名で、長州産業やシャープの生産元実績もあります。蓄電池のラインナップの豊富さが特徴で、家庭のニーズに合ったサイズや容量を選ぶことができます。
屋内用と屋外用、塩害地域対応の蓄電池の取り扱いがあり、設置場所を選ばず、多くのエリアで活用できるのもオムロンの特徴です。
ニチコン
出典:ニチコン
ニチコンの蓄電池の特徴は「トライブリッド蓄電システム」です。世界初の技術で、蓄電池、トライブリッドパワコン、リモコン、V2Hが一体となっています。
トライブリッド蓄電池システムは、蓄電池や太陽光発電と電気自動車の間で電力を移動できる、画期的なシステムです。
テスラ
出典:テスラ
テスラの蓄電池の特徴は、容量に比べてサイズがコンパクトな上に、デザイン性が高いことです。
日本ではまだあまり普及が進んでいませんが、機能性も高く、さまざまな運転モードがあります。ライフスタイルによる使い分けができ、アプリ連携も可能な点も魅力的です。
ファーウェイ
出典:ファーウェイ
ファーウェイの蓄電池の特徴は、価格の安さです。ファーウェイは、太陽光発電設備のパワーコンディショナにおいて世界シェア上位に入るメーカーで、2021年から蓄電池の販売を開始しました。
実績のある企業で、安全性は確保されていますが、明確な販売価格がまだ定まっておらず、比較的安価で導入できます。
DMMエナジー
出典:DMMエナジー
DMMエナジーの蓄電池の特徴は、容量の増設が可能な点です。家族の状況に対応して容量を追加することができ、ライフスタイルに沿った活用ができます。
また、DMMエナジーの蓄電はとても薄いことでも知られています。奥行きがわずか15cmで、屋内外対応なので設置場所を選ばないのもポイントです。
住友電工
出典:住友電工
住友電工の蓄電池の特徴は、業界最小クラスのコンパクトさです。サイズが小さいため、さまざまな場所に設置できる可能性があります。設置スペースに余力があるため、作業スペースを十分に確保でき、メンテナンス性が高いのも注目のポイントです。
また、インターネット回線を利用した、蓄電池の稼働状況を確認できる見守りサービスがあるため故障や設定の間違いなどにもすぐに気づけます。
京セラ
出典:京セラ
京セラの蓄電池の特徴は、クレイ型リチウムイオン電池です。リチウムイオン電池に使われる電極材料に粘土状の物質を使うことで、安全性・長寿命・低コストを実現しています。
発火や発煙などのリスクを抑えることができ、一般的な蓄電池より寿命が5年以上長いことがクレイ型リチウムイオン電池の魅力です。
伊藤忠商事
出典:伊藤忠商事
伊藤忠商事の蓄電池の特徴は、その機能の多さです。中でも、AIが行う充放電の最適化は画期的で、48時間先の消費量と発電量を予測し、使用状況に合う充放電を行うことができます。
また、グリッドシェアポイントでは、太陽光発電設備により減らすことができた二酸化炭素量に応じて、ポイントが付与されるシステムが組まれています。付与されたポイントは、現金やアマゾンギフト券、マイルと交換することが可能です。
ダイヤゼブラ電機
出典:ダイヤゼブラ電機
ダイヤゼブラ電機の特徴は、1日最大2回の充放電が可能な点です。4つある運転モードの中からスマートモードを選ぶと、放電回数が1日2回になります。
太陽光発電と価格の安い深夜電力を活用することにより、節電効果が高まります。リン酸鉄リチウムイオン電池により、サイクル数が一般的な蓄電池の倍程あることも放電数との掛け合わせで魅力的なポイントです。
家庭用蓄電池を選ぶポイント
家庭用の蓄電池を選ぶ際は、いくつかポイントを押さえることが大切です。内容を確認し、後悔しない蓄電池選びをしましょう。
電気使用量
蓄電池は自宅で必要な電気使用量に応じて選ぶことが大切です。
容量が大きくなるほど、本体価格は高額になるため、活用しきれない容量の蓄電池を購入すると、コストパフォーマンスが悪くなります。日々の電気使用量や、停電時に活用したい家電の使用容量を確認して、容量を選ぶことがポイントです。
設置スペース
蓄電池を選ぶ際は、事前に設置する場所を決め、スペース内に収まるかを確認する必要があります。蓄電池は屋内、屋外どちらにも設置することができますが、製品によってサイズが異なります。
設置場所には、メンテナンスをするためのスペースも確保しておく必要があるため、製品選びの際に併せて検討しましょう。
サイクル数
蓄電池を選ぶ際は、サイクル数を確認し数値の多いものを選びましょう。サイクル数とは、蓄電池の寿命とも呼ばれ、蓄電池の充電が0%から100%になった後、0%へ戻ることを1サイクルとカウントします。
1日1サイクル使用すると考え、7,300サイクルの蓄電池を使い続けると「7,300サイクル÷365日」で約20年の寿命という計算になります。
オール電化製品との相性
電気を蓄えられる蓄電池とオール電化は、非常に相性が良い組み合わせです。オール電化住宅の場合、電気代は使用する時間によって金額が変わり、夜間に比べて昼間の方が高額です。電気代が安い夜間に蓄電池に充電し、昼間に充電した電気を使用することで電気代を抑えることができます。
また、ガスを使わないオール電化住宅では、停電時に暖房設備やお風呂などの電化製品を使えなくなりますが、蓄電池があれば電気を使うことができます。
停電時の使用容量
蓄電池を使用することで、停電時にも電気を使えます。停電時の使用容量で気を付けたい点は、蓄電池の対応機器のV(ボルト)数と、全負荷型か特定負荷型かについてです。
蓄電池は主に、100V対応機器と200V対応機器があり、使える家電の範囲が異なります。200V対応機器のほうが使える家電は多いですが、200Vの家電は消費する電力が多いため停電時に使用する際は注意が必要です。
また、全負荷型では停電時に家の全てのコンセントで電気が使用でき、特定負荷型では特定のコンセントのみ電気が使用できます。
保証年数
蓄電池の保証年数は、メーカー内でも製品によって異なる場合があります。設置してから長く使うため、保証年数の長さも選ぶ際に確認しておきたいポイントです。
保証年数内の故障等で保証を受けるには、メーカーが推奨する設置環境や設置場所を守り、点検を受けるなど、適切な使用が前提となる場合もあるため注意しましょう。
地域(寒冷地仕様・塩害仕様など)
蓄電池を屋外に設置する際は、設置する地域の特性にも注意が必要です。寒冷地域や塩害地域では、それぞれ特殊な気候条件に対応した仕様の蓄電池を選ぶ必要があります。
寒冷地や塩害地域で標準仕様の蓄電池を選ぶと、蓄電池の動作が低温で止まってしまったり、劣化や故障の寿命が早くなったりする恐れがあります。
まとめ
蓄電池を選ぶ際は、さまざまな要素を検討する必要があります。蓄電池は一度購入してから、長期的に使うものなので、普段の生活スタイルを分析し、使う家電の種類や時間帯などから最適な製品を選びましょう。
また、屋外に設置する場合は地域特性も考慮する必要があります。屋内設置の場合は、蓄電池のサイズに対して十分な設置・点検スペースがあるか確認しましょう。