住宅用太陽光発電の保守点検・メンテナンスは義務!点検内容と費用を解説

住宅用太陽光発電のメンテナンスは義務!点検内容と費用を解説 太陽光発電

住宅用太陽光発電システムを設置した後には、定期的に保守点検・メンテナンスを行うことが改正FIT法(固定価格買取制度)によって義務化されています。定期的に保守点検・メンテナンスを実施することで安全性が守られるだけでなく、発電量の極端な下落も防げます。

この記事では、保守点検・メンテナンスが必要な理由や自分で保守点検・メンテナンスを行う危険性、メンテナンスの内容などについて解説します。太陽光発電システムの設置を検討している人は、ぜひ参考にしてください。

太陽光発電の保守点検・メンテナンスは義務

太陽光発電のメンテナンスは義務

太陽光発電システムは、再生可能エネルギーを使って環境に優しい生活を実現しつつ、電気代を抑えられる設備です。しかし、長期間にわたって使い続けるためには適切な保守点検・メンテナンスが欠かせません。

改正FIT法の施行により、太陽光発電システムの保守点検・メンテナンスは義務となりました。従来は設置時に安全基準が満たされていれば問題はありませんでしたが、現在は10kW未満の住宅用太陽光発電システムであっても保守点検・メンテナンスをしなければなりません。

メンテナンスを怠ると、FITが取り消される恐れもあります。安全に運用をするためにも、定期的な保守点検・メンテナンスを心がけましょう

太陽光発電の保守点検とメンテナンスの違い

太陽光発電システムにおいては、メンテナンスと似た言葉に「保守点検」があります。保守点検は、太陽光発電システムの機器の状態や、パネル・ケーブルの電圧や抵抗を点検する作業を指します。保守点検によって、太陽光発電システムが問題なく動くかどうかがチェック可能です。

メンテナンスは、太陽光発電システムの機器の清掃や交換をすることです。どちらも改正FIT法(固定価格買取制度)によって義務化されています。

太陽光発電の保守点検・メンテナンスが必要な理由

太陽光発電のメンテナンスが必要な理由

改正FIT法によって、太陽光発電システムには保守点検・メンテナンスが義務付けられています。具体的な保守点検・メンテナンスが義務付けられている理由は、下記の通りです。

  • 発電効率の低下を防ぐ
  • 安全性を確保する

それぞれ解説します。

発電効率の低下を防ぐ

太陽光発電システムの発電効率が低下する主な原因は、パネル表面の汚れによるものです。パネルに付着したほこりや汚れ、鳥のふんなどが太陽光を妨げ、太陽光のエネルギーを効率よく電気に変換する能力を低下させます。

パネル表面の汚れを除去するなど定期的にメンテナンスすることによって、パネルの性能を最適な状態に保ち、発電効率の低下を防げます。発電効率が低下すると、電気代の削減や売電による収入も得にくくなるため、定期的なメンテナンスは大切です。

安全性を確保する

太陽光発電システムのメンテナンスが必要な理由は、安全性を確保するためです。太陽光パネルに付着した汚れを放置していると、「ホットスポット」と呼ばれる現象が起こります。

ホットスポットが起こると、太陽光パネルの一部が異常に熱くなります。これにより、太陽パネルの効率が低下するだけでなく、損傷や火災の原因となる恐れが出てくるのです。

ホットスポットだけではなく、損傷したケーブルやパワーコンディショナーが発火の原因になる可能性もあります。そのため、太陽光パネルを設置する際には適切なメンテナンスが必要とされています。

太陽光発電のメンテナンスは自分でできる?

太陽光発電のメンテナンスは自分でできる?

太陽光発電システムのメンテナンスは、安全性と効率を保つために非常に重要です。

しかし、専門的なメンテナンスや修理は、太陽光発電システムのプロに依頼すべきです。電気に関わる作業は危険が伴うだけでなく、資格が必要です。安全にメンテナンスするためにも、専門の業者に依頼しましょう。

日常的な点検であれば、自分で行えます。具体的には、モニターのチェックや太陽光パネルの目視による確認が挙げられます。例えば、パネルの表面に葉っぱや汚れが積もっていないか、パネルが正常に発電をしているかどうかを定期的にチェックしましょう。簡単な点検を自分で行うことで、問題を早めに発見し、専門家への相談ができます。

自分でメンテナンスを行う危険性

自分でメンテナンスを行う危険性

自分で太陽光発電システムのメンテナンスを行うことで発生し得る危険性は、下記の通りです。

  • 感電
  • 高所からの落下
  • 不適切な取り扱いによる破損

それぞれ解説します。

感電

太陽光発電システムのメンテナンス中に起こる可能性がある事故は、感電です。太陽光パネルやパワーコンディショナーの電圧は高く、扱いに不慣れな人が触れることは大きな危険を伴います。感電は、軽いやけどから命にかかわる重傷まで、さまざまな危険を及ぼします。

太陽光発電システムの稼働中は常に電力が流れているため、専門的な知識がなければ、感電のリスクを避けることは難しいでしょう。太陽光発電システムの電気関連のメンテナンスは、資格を持ったプロに依頼することが強く推奨されます。

高所からの落下

住宅用の太陽光発電システムは多くの場合、建物の屋根上に設置されています。そのため、メンテナンス作業には高所作業が伴います。自分でメンテナンスを行おうとすると、落下によるけがのリスクが非常に高くなるでしょう。屋根上は不安定で滑りやすく、安全な足場の確保が難しい場所です。

高所からの落下は、骨折や捻挫、場合によっては命に関わる事故につながります。リスクを避けるためにも、専門家への依頼がおすすめです。

不適切な取り扱いによる破損

太陽光発電システムのパネルやパワーコンディショナー、接続箱などの機器は非常にデリケートで精密な技術で作られています。不適切な取り扱いをすることで、パネルやパワーコンディショナーなどの破損を引き起こす恐れがあります。

例えば、もし太陽光パネルの設置場所をずらそうとして不適切に取り扱えば、フレームのゆがみやガラスの割れを引き起こす可能性があるでしょう。結果として、システム全体の効率低下や故障の原因となります。

太陽光発電システムのメンテナンスには、専門的な知識と技術が求められるため、経験が浅い個人が自分で行うことは避けてください。

太陽光発電のメンテナンスの内容

太陽光発電のメンテナンスの内容

太陽光発電システムで行うべきメンテナンスの内容は、下記の通りです。

  • 目視点検
  • 精密点検

それぞれ解説します。

目視点検

目視点検は、最も基本的なメンテナンス作業です。目視点検であれば、プロに依頼せずとも自分で行うことも可能です。より詳しく状態を確認したいなら業者に依頼して、太陽光パネルと周辺機器を直接確認してもらいましょう。

目視点検では、パネル表面の汚れや損傷、架台の安定性、配線の露出や劣化の有無などをチェックします。また、枝葉などがパネルに影を落としていないかの確認も必要です。

目視点検により、日々の運用による小さな変化や問題を早期に捉えることが可能となり、大きなトラブルに発展する前に対応できます。

精密点検

精密点検は、目視点検よりもさらに詳細で専門的な点検です。具体的な点検内容の例は、下記の通りです。

  • IR測定
  • IVカーブ測定
  • 接地抵抗検査
  • セルラインチェック など

これらの検査により、目で見て確認できない内部の問題まで詳しく点検が可能です。精密点検を定期的に行うことで、システム全体の効率を最適化し、予期せぬトラブルを避けられます。

精密点検を適切に実施すれば、システムの寿命を延ばし、安定した発電を維持できます。結果として、電気代の削減や売電によって経済的なメリットを得られるでしょう。

太陽光発電のメンテナンスにかかる費用

太陽光発電のメンテナンスにかかる費用

太陽光発電のメンテナンスにかかる費用は、下記の通りです。

  • 定期点検
  • パネル清掃

それぞれ解説します。

定期点検

定期点検の費用は、点検の範囲や内容、システムの規模などによって異なります。一般的に住宅用システムの点検費用は、1回につき1万円から2万円程度です。

定期点検では、太陽光パネルやパワーコンディショナー、架台などの目視点検が行われます。また、加えてパワーコンディショナーの運転点検や電圧測定や絶縁抵抗測定などが行われることもあります。

定期点検によって太陽光発電システムが抱えているかもしれない問題を早期に発見し、大きな修理費用や発電ロスを防ぐため、間違いなく行いましょう。

パネル清掃

太陽光パネルにほこりや汚れ、鳥のふんなどが付着している場合には、パネルの清掃が必要です。費用は一般的に、住宅用の太陽光発電システムでは3万円から6万円が相場です。しかし、パネルの枚数が多い場合や汚れがひどい場合は、より多くの費用がかかる可能性があります。

業者に依頼をした場合は、マイクロファイバークロスが付いたモップなどでの洗浄が行われます。専門業者に依頼をすれば、コストはかかりますが確実にパネルをきれいにしてくれるでしょう。

追加でかかる可能性がある費用

追加でかかる可能性がある費用

太陽光発電システムのメンテナンスを依頼する際には、定期点検費やパネル清掃費以外にも、下記の費用が追加でかかる可能性があります。

  • 足場代
  • 故障時の修理代

それぞれ解説します。

足場代

太陽光発電システムが屋根上に設置されている場合は、足場の設置が必要になるケースがあります。足場は、作業員が安全に高所で作業を行うために欠かせないものです。

足場の設置費用は、5万円から10万円が相場です。ただし、設置する高さや必要な面積、設置期間などによって料金は異なります。通常、足場は作業の開始前に組み立てられ、作業が完了するまでの間、現場に設置され続けます。この期間中は、足場のレンタル料が発生し、コストに加算されます。

故障時の修理代

太陽光発電システムが故障した場合は、修理費用や交換費用が発生します。部材ごとの費用目安は、下記の通りです。

パワーコンディショナー

パワーコンディショナーの修理費用の目安は、20万円から30万円です。パワーコンディショナーの交換目安は約10年であるため、設置してから10年以上経過している場合には、状態に応じて交換をする必要があります。

太陽光パネル

太陽光パネルの交換目安は、1枚当たり10万円から15万円です。点検の際、異常や劣化、故障が見つかった場合は、修理や交換をしなければなりません。

その他の部材

モニターや接続箱、ケーブルなどその他の部材に関する修理費用・交換費用は部材によって異なります。必要に応じて業者に見積もりを依頼しましょう。

太陽光発電のメンテナンスの実施頻度

太陽光発電のメンテナンスの実施頻度

太陽光発電システムのメンテナンスは、下記のタイミングで実施します。

  • 定期点検時
  • スポット点検時

それぞれ解説します。

定期点検

定期点検は、太陽光発電システムの健全性を保ち、長期間にわたって性能を維持するために大切です。定期点検は通常、4年に1回以上が目安です。

点検の主な内容としては、太陽光パネルの清掃や物理的な損傷のチェック、配線の状態確認、サーモグラフィーによるホットスポットの確認が挙げられます。また、システム全体の電気的出力を測定し、パフォーマンスの低下がないかの確認も必要です。

定期点検によって、太陽光発電システムに関わる問題を初期段階で発見し、対処できます。大きな修理が必要になる前に、定期的にメンテナンスをしましょう。

特に重点的に行うべきタイミングは、下記の通りです。

  • メーカー保証が切れる直前
  • 出力保証が切れる直前

保証を受けるためにも、この期間には必ず実施してください。

スポット点検

スポット点検は、太陽光発電システムに問題が起こった際や悪天候の後に行う点検です。システムの一部に異常が見られる場合やパフォーマンスの低下が見られる場合には、スポット点検を実施しましょう。

行うべきタイミングの例は、下記の通りです。

  • 発電量の急激な低下や変動
  • パネル表面の明らかな損傷
  • モニターから警告やエラーメッセージが出ている

問題が発生した際にはすぐに専門業者に連絡することが重要です。太陽光発電システムの効率と安全性を維持するためにも、連絡できる業者をピックアップしておくなど、トラブルに対応できる準備を整えておいてください。

まとめ

まとめ

住宅用太陽光発電システムのメンテナンスは、安全で効率的な運用を維持するために欠かせません。定期的に点検をすることで、システムのパフォーマンスを最適化し、長期間にわたって電気代削減や売電の恩恵にあずかれます。

目視点検は自分自身でできますが、もし目視点検によって異常を見つけた際には、専門業者にメンテナンスの依頼を出しましょう。自分でメンテナンスをすることは大きな事故につながるため、避けるのが賢明です。