自宅に太陽光発電システムを導入したいとは思いつつも、初期投資の負担に尻込みをしている方は多いのではないでしょうか。この記事では初期投資を抑えて太陽光発電システムを導入できるリース契約について解説します。
リース契約での太陽光パネルの設置には多くのメリットがありますが、それと同時にデメリットも存在します。
リース契約の概要から始まり、この契約形式がなぜ初期投資を抑えられるのか仕組みの理解、そしてメリットだけではなくデメリットなどの注意点に関しても取り上げるので、太陽光発電の導入を検討している方はぜひご覧ください。
太陽光発電のリース契約とは?
リース契約は、リース会社が所有する太陽光発電設備を借りて使用し、定期的にリース料金を支払う仕組みです。利用者は設備の設置費用やメンテナンス費用を大幅に削減できるため、初期投資の負担を軽減しながら、自家消費や売電によるメリットが得られます。
リース料金の目安
リース料金の目安については、リース契約の内容や太陽光発電設備の規模によって大きく異なりますが、多くの場合、月額1万円から4万円程度が相場とされています。
具体的な料金は、設備の出力規模やリース期間、サポートの内容など、契約の詳細によって決まります。事前に複数のリース会社から見積もりをとって比較検討し、各家庭の事情に沿った契約内容を選んでください。住宅用太陽光発電のリース料金目安を載せておきますので参考してください。
システム容量 | 月額リース費用 | 年間リース費用 |
---|---|---|
3kWシステム | 約9,000円~15,000円 | 約108,000円~180,000円 |
4kWシステム | 約12,000円~20,000円 | 約144,000円~240,000円 |
5kWシステム | 約15,000円~25,000円 | 約180,000円~300,000円 |
6kWシステム | 約18,000円~30,000円 | 約216,000円~360,000円 |
家庭で太陽光発電を導入する際には、リース料金の他にも、設備導入による電気代の節約や、可能であれば利用できる補助金制度についても検討するとよいでしょう。
また、サービスによっては、メンテナンスや修理が無償で提供されることもあるため、これらを含めた総合的なコストパフォーマンスを考慮することが大切です。
PPAとの違い
PPAとは、電力購入契約のことで、太陽光発電設備の所有と運営を第三者が担い、その電力を契約に基づき購入する方式です。リース契約とPPA(Power Purchase Agreement=電力販売契約)の違いは、リース契約は設備の使用に料金を支払い、PPAは電力の購入に料金を払う点です。
PPAのメリット
PPAの大きなメリットは、初期投資費用がかからない点です。設備の設置やメンテナンスの責任はPPA提供者が負うため、利用者は太陽光発電による安定した電力供給を受けられ、電力コストの削減が見込めます。
また、契約期間中は電力価格が固定されることが多く、将来市場価格が上がったとしても、PPA提供者から購入する電力価格は契約時から変わらず利用できます。
PPAのデメリット
PPAのデメリットは、契約自体が長期になることです。そのため、一度始めたら契約期間が終了するまで、約束された価格で電力を買い続ける必要があります。例えば市場価格が下がった場合は、市場価格より割高な契約価格を払い続けなければならないのです。
このような契約は内容を正しく理解するのが難しく、細かな条項を把握し、有利な条件で交渉するためには専門的な知識が必要です。
PPAを提供する会社の信頼性や財務状態が悪化すると、契約している電力の供給が不安定になるリスクもあります。PPAを選ぶ場合は、契約先の会社を特にしっかりと吟味するようにしましょう。
屋根貸しとの違い
屋根貸しは、所有者が屋根スペースを太陽光発電事業者に貸し出し、事業者から利用料を受け取る仕組みです。リース契約と異なり、発電した電力の利用権は事業者側にあります。
屋根貸しのメリット
屋根貸しは、太陽光発電事業者と不動産所有者との間で結ばれる契約です。所有者は自己の建物の屋根や土地の一部を事業者に提供し、事業者はそのスペースに太陽光パネルを設置して運用します。この際、事業者から所有者へ使用料が支払われます。
初期投資することなく太陽光発電を開始できる点は、リース契約と同じです。一方で、屋根貸し特有のメリットとして、貸主は設備に関するメンテナンス責任がなく、設置から一定期間後に定期的な使用料を受け取れる点が挙げられます。これにより、使用していない屋根スペースを有効活用し、安定した収入源を確保できる点も魅力です。
屋根貸しのデメリット
屋根貸しを行った場合、発電した電力を所有者が使用することはできません。全てが事業者が管理し、通常は電力会社に売電されます。この契約は長期間にわたることが多く、その期間中は契約に定められた使用料以外で収入が得られません。
さらに、屋根の条件によっては太陽光発電パネルの設置が難しい場合や、設備の設置が屋根に負担や損傷をもたらすといったリスクも考慮しなければなりません。
また、契約が終了した後には、設備の撤去や屋根の修復にかかる費用や手間が生じる可能性があり、これらもデメリットとして認識しておいてください。
太陽光発電をリース契約で設置するメリット
リース契約による太陽光発電の導入は、初期投資の負担軽減、自家消費や売電による収益化、補助金の活用、経費計上による税制メリットなど、さまざまなメリットがあります。それらについて、順に解説します。
初期費用がかからない
太陽光発電を自宅に設置しようと思うと、設備の大きさや種類にもよりますが、初期費用は数百万円から数千万円という大きな金額になることが多いです。最初に多額のコストが必要なため、太陽光発電を始めたいけど始められないという人もいます。
しかしリース契約にすれば、この初期費用を心配する必要がありません。リース契約の場合、太陽光発電の設備を買う代わりに、リース会社から借りて使います。つまり、利用者は毎月決められた料金を支払うことで、設備を利用できるのです。
この方法なら、最初に大金を用意しなくても、太陽光発電システムの導入が可能です。
自家消費や売電ができる
リース契約で設置した太陽光発電システムを利用することで、発電した電力を自家消費できます。さらに、余剰電力は電力会社に売ることが可能です。これにより、電気代の削減だけでなく、売電収入による追加の収益が得られます。
つまり、自分で使う電気を作りながら、余った電気を売ってお金をもらえるわけです。このように自家消費と売電のバランスを最適化することで、経済的利益を最大化することが可能になります。
前述した屋根貸し契約では、契約内容次第ではこの自家消費や売電ができないケースがあるため、リース契約またはPPA契約ならではのメリットと言えるでしょう。
利用可能な補助金がある
近年、環境保護とエネルギー安全の向上を目指し、太陽光発電のような再生可能エネルギーの普及を促すためのさまざまな取り組みが行われています。その一つとして、家庭や企業が太陽光発電システムを導入する際に補助金を提供する制度があります。
これらの制度の大きな目的は、太陽光発電の初期投資に関する負担を減らし、より多くの人々が太陽光発電を導入しやすくすることです。リース契約での導入の場合も、対象となるケースがあります。
補助金を利用すれば、費用の心配を大きく軽減しながら太陽光発電への投資が可能になるため、しっかりと調べて、対象となる場合は忘れずに申請することをおすすめします。
リース費用は経費にできる(法人契約の場合)
法人がリース契約を利用する場合、支払うリース料は経費として処理できます。この経理処理により、税金の負担が軽減されます。具体的には、リース料全額を、その支払いを行った事業年度の費用として計上できるので、利益が減少し、税負担が低くなるのです。
税制上のメリットを最大限に活用するためには、リース契約の内容やリース料の計上方法、さらには税法上の適用条件など、細かな点に注意を払う必要があります。
特に、リースの種類によって処理が異なる場合があるので、適切に処理するためには税理士などの専門家に相談することが大切です。
太陽光発電をリース契約で設置するデメリット
太陽光発電のリース契約のメリットについて解説しましたが、一方で注意すべきデメリットも存在します。これらは契約前にしっかりと理解し、検討しましょう。注意すべきデメリットも見ていきましょう。
途中解約ができない
太陽光発電のリース契約は、一度始めると契約期間終了まで継続する必要があります。つまり、契約期間中に引っ越し、家計の悪化、技術進歩でより良い発電方法が出現するなど、さまざまな理由からリース契約を途中でやめたくなっても、契約を解除するのが難しいのです。
もし途中で解約したい場合は、残りのリース料金を一括で支払わなければならず、さらには撤去費用や追加の解約料金などのペナルティーが課される場合もあります。
リース契約を検討する際には、契約期間の長さ、途中解約の条件、解約時の費用負担について事前に十分に理解し、将来の計画や予測と照らし合わせて慎重に判断するようにしましょう。
メンテナンス費用がかかる
リース契約では、設備の所有権がリース会社にありますが、保守整備点検の費用負担は利用者が負うよう契約で定められているケースが多く、これが予期せぬ追加費用となることもあります。
リース会社が保守整備点検の費用を負担してくれるケースもありますが、その場合はメンテナンスコストも込みのリース料金が設定されます。以下のポイントを契約前に確認するとよいでしょう。
契約期間が長い
契約の詳細にもよりますが、リース契約の期間は一般的に10年程度。技術進歩により、より高効率で低コストな太陽光パネルが市場に登場する可能性がある中で長期契約を結んでしまうと、新しい技術への切り替えが困難になります。その結果、契約期間中は古くて効率の低い技術に縛られてしまう恐れがあるでしょう。
さらに、リース契約では機器の利用料を固定で支払う必要がありますが、売電収入は売電価格に左右されます。将来的に売電価格が大きく下落すると、固定のリース料金の負担が重くなり、利益が減少する点が問題になる可能性があります。
パネルメーカーが限られる
リース契約で太陽光発電システムを導入する際、利用者は提供会社が選んだ特定のパネルメーカーの製品から選択することになります。
一般的にリース会社は、一つあるいは数社のメーカーとのみ提携しており、それらの会社が提供する太陽光パネルに限定されるため、市場に出回っているパネルを選ぶ自由が制限されてしまいます。
例えば、希望のメーカーや容量のパネルの選択肢がなかったり、新技術を用いたより効率的なパネルや、より低コストで同等の性能を持つパネルが発売されたりした場合でも、リース契約を通じてこれらの新しいパネルを導入することが難しい場合があります。
トータルの支払いが割高になる
太陽光発電パネルの購入に比べて、リースでは初期投資がほとんどかからずに導入できます。しかし、この契約形式には長期的な視点で考えた場合、総コストが高くつく可能性があるでしょう。
例えば、初期費用が無料、または非常に低いリース契約でも、長期間にわたって毎月の料金を支払い続けると、結局のところシステムを直接購入した場合の総費用よりも多くの金額を支払うことになるかもしれません。
リース料金は主に設備のレンタル費用、利息、保険料などから構成されており、特にリース料金に高い利息が含まれている場合、トータルの支払いが割高になります。
太陽光発電のリース契約で使える補助金
リース契約でも利用可能な補助金の例として、東京都であればリースなどで太陽光発電設備を導入する場合でも補助の対象になります。この補助金は、太陽光発電設備、蓄電池およびV2Hの設置費に対して最大39万円/棟が補助されます。
また、中小企業がリースで太陽光発電システムを導入する場合は、環境省による「脱炭素社会の構築に向けたESGリース促進事業」の補助が受けられます。この補助金は、総リース料の1%〜最大6%の補助が得られます。
補助金の詳細は地域や時期によって異なるため、導入前に情報をしっかりと確認しておきましょう。
公式ホームページ:クール・ネット東京「令和6年度東京ゼロエミ住宅導入促進事業」
出典:環境省「脱炭素社会の構築に向けたESGリース促進事業」
太陽光発電を安く設置するなら?
太陽光発電の導入を検討しているなら、コストを抑える方法を知りたいでしょう。特にリース契約を利用する場合、初期費用を抑えられる一方で、長期的な視点でもコストを見ることが大切です。製品と業者、それぞれの観点で選ぶポイントを紹介します。
総コストで最も効率的な製品を選ぶ
太陽光パネルにはさまざまな種類があり、価格もピンからキリまでです。しかし、安いからといって効率が悪いわけではありません。最近の技術進歩により、コストパフォーマンスに優れた製品も数多く登場しています。
大切なのは、単に価格だけでなく、発電効率、耐久性、保証期間などを総合的に考慮すること。また、将来のエネルギー需要や電力価格の推移を見据えて、総コストで最も効率的な製品を選ぶことが重要です。
サービス内容と価格を比較検討する
設置業者の選定も大きなポイントです。設置費用は業者によって大きく異なることがあるため、複数の業者から見積もりを取り、サービス内容と価格を比較検討することが肝心です。安さだけでなく、アフターサービスや保証内容、これまでの実績や顧客満足度なども確認し、総合的に判断しましょう。
また、地域に根ざした業者は、地元の気候や設置環境を熟知していることが多く、メンテナンスなどの面で有利な場合があります。
業者の比較に当たっては、ソーラーパートナーズやグリエネなどの一括見積もりサイトで見積もりを依頼してみるのもおすすめです。
まとめ
太陽光発電のリース契約は、多くの場合、家庭や企業にとって魅力的な選択肢となるでしょう。初期投資の削減、継続的な収益の可能性、補助金の利用など、多くのメリットを享受できます。
しかし、長期契約の拘束、技術進化への対応の遅れ、固定費用の負担など、考慮すべきデメリットも存在します。
リース契約が個々の状況に最適な選択であるかどうかは、それぞれのニーズ、財務状況、そして将来計画に大きく依存します。リース契約を検討する際には、この記事で提供された情報を参考に、総合的な判断をしてください。